中学三年の記憶はほとんどない 感動的な出来事は何もなかったような気がする 中学二年まで荒れていた同級生は中三になると、大人しくなっていた。 どこにでもいそうな平凡な中学生だった 子供の頃、好きだった野球も 中学に入って縦の関係を目の当たりにして 好きではなくなっていた 部活だから義務的にやることに変わっていた 父は、試合の日は仕事を休んで見に来てくれていた 父や母と本気でぶつかったことはない 成績優秀で自慢の息子だったに違いない 特に受験勉強を頑張ったわけではなく 県で一番の公立進学校に合格した 兄は頭が悪かった 名前を書けさえすれば受かると言われていた高校にすら落ちた。 母には、「お前はお兄ちゃんみたいになったら駄目だよ」と毎日言われていた。 それでも、父と母は、兄を一番可愛がった。 僕はその頃から、愛に飢えていたのかもしれない。 母の言う通り勉強は頑張った 学校の成績は良かった 公立の進学校にも合格した それでも、僕は愛されていると感じたことはなかった 成績が良いから褒めてもらえるだけだ 条件付きの愛だった その頃からだろうか 大好きだった兄を いつも「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と後をついて追いかけていた兄を 軽蔑の眼差しで見るようになった そして僕は笑わなくなった