「佐山 浩二です。これからよろしくお願いします」 コンビニでアルバイトをしていた僕に後輩ができた。 人付き合いは苦手な僕だったが、店長の「新人教育よろしくな」の一言で 僕が佐山の教育をすることになった。 歳も一つ下で、素直に言うことを聞いてくれたので、やりやすかった。 自分にも後輩ができた嬉しさもあり、一生懸命教えた。 浩二は物覚えもよく、気さくな奴で、僕らはすぐに打ち解けた。 「聡志さんて、彼女いるんですか?」 「いるよ」 「写真とか持ってないんですか?見せてくださいよ」 僕は躊躇いながらも、栞と旅行に行ったときの写真を見せてあげた。 麦わら帽子をかぶって、笑顔で振り返る栞の写真 お気に入りの写真だ 「めっちゃかわいくないですか?俺タイプっす」 「だろ?手出すなよ」 「出すわけないじゃないですか。やめてくださいよ」 妙な胸騒ぎがした。。。
本大好きサラリーマンの小説⑫~すれ違う気持ち~
聡志と栞は何度も抱き合った それまでの孤独を埋めるように 聡志は何度も栞を求めた 「セックスってこんなに気持ちいいんだ」 いつの間にか、 聡志は快楽だけを求めるようになってしまった 口に含まれる行為も 栞の中も、なにもかも気持ちよかった 好きだからセックスをしているのか セックスがしたいから好きなのか 聡志は分からなくなっていた そんな聡志に 栞はしだいに愛想を尽かしていった
本大好きサラリーマンの小説⑪~未熟な二人~
栞は時々、なんの前触れもなく機嫌が悪くなった。 僕は、栞の感情の揺れに狼狽えることしかできなかった。 その頃の僕に、女心をわかる術もなくー今もだがー ただ、見守るしかなかった。 今の言葉でいう「つんでれ」だったのか。。。 天邪鬼だったのか。。。 もう少し、僕が分かって上げられたら、あんな終わり方をしなかったのかもしれない。 僕は、不器用だった それは今も変わらない もしもあの時、違う行動をとっていたら未来は変わっていたのだろうか。 いや、きっと変わっていなかっただろう。 同じように別れを選んでいただろう。 僕たちは未熟だった。
本大好きサラリーマンの小説⑪~赤い日記帳~
1998年 まだ、スマホもなかったし、ガラケーも普及していない頃 連絡手段は家電話のみ 栞はよく電話の線を抜いていた 喧嘩をしては線を抜く 連絡取れず、家までいく そして仲直り そんな日々も懐かしい 交換日記しようか 「面白そうだね。やろう」 赤い日記帳 僕が書いて、栞に渡す 栞が書いて、僕に渡す 大事なものを僕は失った
本大好きサラリーマンの小説10~裏切ってもなお~
坂くん、ごめんよ 栞のことは君が先に好きだったのに 相談もされていたのに 僕が付き合ってしまった だから僕を殴ってくれないか 「いいですよ。しょうがないです」 「聡志のこと私が先に好きになったのに。。。」 栞は栞で親友の美香を裏切った形になってしまった。 周りの人を裏切って 傷つけて でも 一緒にならないことは選べなかった S極とN極のように、引っ付かずにはいられなかった
本大好きサラリーマンの小説⑦~散歩~
今度二人で散歩しよう。 行ってみたいところがあるんだ。 「いいよ」 栞は微笑みながらそう言った。 初めてのデートで散歩なんて古臭いよね。 「いい。行ってみたい」 西八王子から中央線で立川まで。 昭和記念公園。 ただ歩いて、いろんな話をした。 きっと僕の方が一方的に喋っていた。 栞はうなづきながら、ただ聞いてくれた。 それが心地よかった 「聡志の話し方、好きよ」 今思えば、栞のその言葉に甘えていたのだと思う。 栞の本心が、最後まで分からなかった。
本大好きサラリーマンの小説⑥~セックスのあとで~
「私は誰とでもできるんだよ」 終わった後、ベッドの中で栞はそう言った 僕にとっては初めての人で、セックスというものを初めて知った直後にそう言われた。 なんでそんなこと言うんだよ なんでそんな自分を傷つけるようなこと言うんだよ 「出ていってくれないか」 ショックと混乱で、そう言うのがやっとだった。 悲しい表情を浮かべて栞は出ていった。 あのとき 栞はどんな気持ちで その言葉を口にしたのだろう ただの遊びだったのだろうか。 初めて、自分の内面を話せる人ができたと思った その人と結ばれて幸せを感じていた直後 そう言われた。