高3の彼女

優子とはどういういきさつで付き合うことになったのだろう。
同じ中学出身だが、中学時代は話したことは一度もなかった。
そもそも高3で同じクラスになるまで、存在自体を知らなかった。
何がきっかけだったのだろう。

とにかく僕らは「付き合っていた」
といっても、帰りに一緒に帰ったり、手紙交換をするくらいで
キスはおろか、手を繋いだこともなかった

始まりが不明なら、終わりも不明だった。
いつの間にか終わっていた
自然消滅。
別れよっか
もなく。

優子と付き合っている時も
僕は初恋のあの子のことがずっと好きだった

朝7:50の急行電車
乗る車両も同じ
話しかけることがどうしてもできなかった

「おはよー」って挨拶すればよかった。
無視なんてされるわけないのに
何をあんなに怖がっていたんだろう

そんなに自分に自信がなかったのだろうか
クラスの女子とは普通に話せるのに。。


野球は9人でするスポーツだ
僕らの学年は10人
下の学年は2人
3年生が引退した後、僕らのチームは12人になった
だからこそ
僕たちの結束力は強かった

だれか一人でも欠けようものなら試合すらままならない

でも、僕はあのチームが好きだった
あの少人数だからこそ絆が生まれた

性の目覚めは遅かった
女性に興味がなかったわけではない
むしろ興味がありすぎて、そんな本をこっそり買って読んでいた

ただ、僕は、マスターベーションの仕方を知らなかった
僕がマスターベーションを覚えたのは高校2年の夏だ

それまではエロ本に性器をこすりつけて満足していた
精液や精子が性器から出る、ということを知らなかった
それも、野球部の奴らが教えてくれた
「オナニーってどうやってするの?」
「お前、あほか。そんなん、液体が出るまでち〇ぽ上下に動かしたらええんや」

衝撃だった
あの衝撃は今でも忘れられない

僕はしばらくオナニーの虜になった
そして変なジンクスもできてしまった

「試合の前の日にオナニーしたら打てない」

これは、ほぼ百発百中当たった

で、我慢した翌日はヒットを打てる

だったら、試合の前の日はやらなきゃいいじゃん、と思った。
でも止められない時の方が多かった。。。

苦い思い出だ。。

高校3年

高校3年生のクラスは、知っている奴が一人もいなかった。
僕は教室で浮いていた

3年生なのに、部活頑張っているバカな奴

そんな風に見られていたと思う。
ニヤニヤ笑うクラスメートが苦手だった

授業中も上の空だった
1、2年のとき同じクラスになった初恋の人とも3年はクラスが違った
僕は1階
彼女は2階
休み時間に廊下をすれ違うこともなくなった

2年の時、告白をして以来、僕が彼女を避けるようになった

彼女はどう思っていたのだろうか

文化祭

野球部の出し物に彼女は来てくれた

もしかしたら彼女も僕のことを好きでいてくれたのかもしれない

3年

1階ですれ違ったこともあった

あの時、目が合ったのに僕は何も言えなかった

3年生

野球以外で楽しいことはなかった

僕はクラスで完全に浮いていた

なのに学級委員長に選ばれた

バカにしている

初恋

高校一年生
同じクラスになったあの子が初恋だったのではないだろうか
特に話しかけるわけでもなく

教室の遠いところから眺めていた

高校二年生も同じクラスになった
進級の時、彼女の名前が自分のクラスにあったあの瞬間
あの喜びは久しく味わっていない

2年生の秋
練習が終わって
野球部の奴らが見守る中、下駄箱前で告白

彼女の答えを聞くのが怖くて
「俺、自分の気持ち伝えるだけで満足だから。。。」
もしあの時、勇気を振り絞って
「俺と付き合ってください」
とか言えてたら、どうなっていたんだろう。

自分の気持ちを伝えるだけで、彼女の気持ちを聞こうとしなかった

あの頃から、逃げ道を用意するような
そんな生き方だったのかもしれない

あの時の自分に声をかけてあげたい

「振られても大丈夫だよ」
「断られても大丈夫だよ」



進路

高校3年の7月まで、僕は野球に明け暮れた
それは、受験から目を背けたかったからじゃないのか

受験よりも夢中になれた
と言えば聞こえはいいが
要は、受験から逃げていたのだ

高校2年の秋
県大会で勝ち進んだ僕たちは、授業がある平日に試合をすることが何日かあった。
その、2,3日、授業を聞かなかったことで、一気に内容が分からなくなった。
ついていけなくなってしまった。

僕は、野球に逃げていたのだろうか
最後の試合が終わる
それはイコール受験を意味していた
逃げていた現実が押し寄せる

そこから挽回しきれない程、僕の成績は落ちていた

浪人をすればよかったのだろうか

ただ、あのときの僕に浪人の選択肢はなかった
そして
家に残る選択肢もなかった

関西と、東京
とりあえず家から離れたかった

目的もなく進学校に入学し

目的もなく合格した大学に進学

上京した

今でも思う

あのとき

浪人していれば

野球はそこそこにして

もっと勉強を頑張っていたら

僕の人生は違ったものになっていただろう

「後悔」について考えることがある

それを肯定的に捉える時もあったし

否定的に捉えることもあった

今、思う

「後悔」はするものだ

後悔したことを後悔してはいけない

僕の人生はこれからも続くのだから

野球

高校生

野球が僕という人格を作った

野球が僕の人生を狂わせた

「もっと練習しろよ」

「練習しなきゃ勝てないよ」

毎日毎日、一人遅くまでグラウンドに残ってダッシュを繰り返した

高校3年生

進学校の3年は、ほとんど部活を辞めている

一生懸命だった仲間たちも次第に受験にシフトしていった

僕はラストスパートをかけるように自分を追い込んだ

あの3か月

僕は初めて「本気」を実感した

「あ~、本気ってこういうことなんだ」

どうしてもっと早く本気になれなかったのだろう

辛かったダッシュも

自分のためと思えたら辛くなくなった

もう一本

あと一本

身体は疲れているはずなのに

心は躍動していた

打算もない

妥協もない

ただ自分のために

白球を追いかけた夏は終わった

心はグラウンドに置いたまま

今もなお燻ぶっている

回想~中三~

中学三年の記憶はほとんどない
感動的な出来事は何もなかったような気がする
中学二年まで荒れていた同級生は中三になると、大人しくなっていた。
どこにでもいそうな平凡な中学生だった

子供の頃、好きだった野球も
中学に入って縦の関係を目の当たりにして
好きではなくなっていた
部活だから義務的にやることに変わっていた

父は、試合の日は仕事を休んで見に来てくれていた

父や母と本気でぶつかったことはない

成績優秀で自慢の息子だったに違いない

特に受験勉強を頑張ったわけではなく

県で一番の公立進学校に合格した

兄は頭が悪かった
名前を書けさえすれば受かると言われていた高校にすら落ちた。

母には、「お前はお兄ちゃんみたいになったら駄目だよ」と毎日言われていた。
それでも、父と母は、兄を一番可愛がった。

僕はその頃から、愛に飢えていたのかもしれない。

母の言う通り勉強は頑張った
学校の成績は良かった
公立の進学校にも合格した

それでも、僕は愛されていると感じたことはなかった

成績が良いから褒めてもらえるだけだ

条件付きの愛だった

その頃からだろうか

大好きだった兄を

いつも「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と後をついて追いかけていた兄を

軽蔑の眼差しで見るようになった

そして僕は笑わなくなった


本大好きサラリーマンの回想~中2~

中学2年
教室は荒れていた
小学校の友達が、別人のようになっていった
授業中、大声を出して先生を困らせる奴
中2の担任はまだ20代だった
先生は毎日泣いていた

休み時間
男子は女子の胸を触り
女子は男子の性器を触っている

国語の先生は授業中、詩の朗読をしながら涙を流していた
あの先生は健在なのだろうか
当時50は過ぎていたから、もしかしたらもうお亡くなりになっているのかもしれない
それだけの歳月は過ぎた

「なんで俺ばっかり怒られなあかんの?」
「他の奴もやってるやん!」
そう言い訳をする生徒を
「今はお前に言ってるんだ!」
と、真正面から言った先生を今も覚えている

中学時代の楽しい思い出はあまりない

野球もそこそこ頑張ったけど、小学生の頃のように楽しくできなかった。
部活になったとたん、好きだったことが「強制」にかわり、のめりこむことはなくなった。
勉強は、普通にできた。
上位10人には入っていたと思う。

僕にとっては授業がすべてだった
復習と予習
そして授業
その繰り返しだった。
80点台では親は褒めてくれなかった
90点以上とらないと、満足してもらえなかった。
誰のために勉強をしているのか
何のために勉強しているのか
当時は分かっていなかったように思う。
テストで良い点をとれば親に褒められる。
それが目的になっていた。

中学時代の記憶は断片的だ

中3の記憶はほぼ残っていない。

本大好きサラリーマンの小説㉟

「恥の多い生涯を送って来ました」

太宰治「人間失格」の冒頭

自分の生涯も恥が多い

栞と付き合っていた時

恥も多かったけど真っすぐだった

あの頃の自分が懐かしい

あの頃の自分に戻りたいと、時々思う

今の自分は汚れてしまった

30代はあっという間だった

仕事では何も成し遂げられず

妻には尻にしかれ

毎日気持ちを奮い立たせなければ立っていられないような眩暈を覚える

西八王子のあの川沿い

散歩した公園

「定丸」で過ごした一夜

友人のマンションで抱き合った夜

駅のホームで交わした口づけ

すべての思い出が色褪せない

この先も恥をさらしながら生きていくのだろう

この先、二人の糸が再び交わる時は来るのだろうか

そんなことを考えるのも悪くない

衰えた脳でそんなことを考える

本大好きサラリーマンの小説㉞

「店長は将来何をしたいんですか?」

「俺、本を書きたいんだ」

「店長なら書けますよ」

有沙の無邪気な笑顔

遠慮のない言葉が僕を勇気づけてくれた

この恋はいつ終わるのだろう

幸せであればあるほど

絶頂であればあるほど

その反対にある別れを僕は恐れた

一瞬一秒を心に焼き付けるように

どんな場面も思い出せるように

心に刻んだ



相手の気持ちが冷めていくのがわかることほど辛いものはない

でも、僕は感じた

いつからか、メールの返信が遅くなったり

そっけない内容が続くようになり

終わりを悟った

栞のときのように

僕は悟った


恋はいずれ終わる

そのまま枯れるのか

愛に育つのか

血の繋がりのない愛はあるのだろうか

僕の魂は、今を生きているだろうか