長崎で多くの仲間に出会った 一人で行けるバーも開拓した 一度、そのバーに部下を連れて行ったことがある。 マスターやママから「美穂ちゃん」と呼ばれているその子もまた 長崎に来て日が浅かった。 夜遅くまで二人で飲んで 帰る時、ママから「美穂ちゃんをちゃんと家まで送ってくんよ」 と言われ送っていった。 あれは、マスターとママと美穂の共謀だったのだろうか。 マンションの下まで送ると 「聡志さん、うち上がっていきます?」 据え膳食わぬは男の恥 酔った勢いもあり、美穂の部屋に入った カーペットに腰を下ろした時 美穂のスカートから下着が覗いた 僕の理性は飛んでしまった 美穂のことは好きでもなかったし ましてや部下 しかも知り合って間もない 駄目だと頭では理解しつつ 美穂の口に含まれた僕の性器は抑えが効かなくなっていた 下着をずらし 騎乗位で下から突き上げる 必死に腰を振る 終わった後、後悔の念が押し寄せてくる 美穂は恐らく僕のことが好きだったのだろう 「泊っていきますよね?」 (帰りたいんだけど) 「うん」 朝が来て美穂の部屋を一緒に出て別れた後、 どうやってなかったことにするか、考えた。 その日の夕方に会った時 美穂にははっきり告げた 「ゴメン。昨日のことはなかったことにしてくれ」 最低な男がそこにいた。 それからしばらく何事もなかったかのように一緒に働いた 美穂は僕のことをどんな風に思っていたのだろう あんな一方的な言葉に納得できたのだろうか 「私、擦れた男が好きなんです。」 美穂はそう言って笑った。
本大好きサラリーマンの小説㉘~長崎へ~
智美と別れた後 長崎に転勤になった 初めて長崎に降り立った日のことを今でもよく覚えている 長崎駅から路面電車に乗って 近くの不動産へ マンションはちょっとお洒落な1DK 風情のある町 高校の頃、修学旅行で行って以来の町 坂の多い町 眼鏡橋 オランダ坂 水辺の森公園 出島 毎日一人で出歩いた 一人、眼鏡橋のベンチに座りながら よくタバコを吸っていた 夜は空を見上げた 陽の長さに驚いた 20時過ぎてもなお明るさを保ったまま 僕は長崎が好きになった 町も人も好きになった 東京での喧騒が噓なくらい 穏やかな町だった 素直で素朴な人が多かった 東京で荒んだ心をこの町が、この人たちが癒してくれた 僕はこの町でしばらく生きていくんだ 初めて食べた五島うどんに感動した 魚の新鮮さに驚いた 見慣れた風景に、僕は飽きなかった いつまでも座っていられた ここで何が待っているんだろう この風情ある町でどんな人たちと出会うだろう 毎日穏やかにワクワクしながら過ごした
本大好きサラリーマンの小説㉗
栞はいつも僕の心に問いかける 栞はいつも僕の思考の上をいく 恋人に栞を重ねる 25歳のときに付き合った智美には 僕の過去を知ってほしかった 栞とのことも知ってほしかった 赤い交換日記も見せた 「なんでこんなもの見せるの?」 「こんなもの見せて私にどうしろって言うの?」 そう言って智美は泣いた。 智美とは結婚前提に付き合った 同棲もしていた 結婚の話もまとまりかけた頃 栞から連絡があった 「あなただけ幸せになる気?」 記憶の断片を辿る 僕は知っていたのか 知らなかったのか 記憶が曖昧になる 結局、智美とは別れた 僕はどこかで栞を求めていた 智美とも、栞のときと同じ気持ちになれると思っていた でも、なれなかった。
本大好きサラリーマンの小説㉖
栞のことを恨んだことがあるだろうか 栞に復讐してやろうと思ったことがあるだろうか 23歳 栞が東京に来る 川崎で待ち合わせた僕たちはラブホテルに直行した 浩二とは続いているようだった。 「俺とは1年しか付き合えなかったのに。。。」 そんな風に思った。 これからセックスするのかな。 多分するんだろうな。 だからここに来たんだ 先にシャワーを浴び、栞がシャワーを浴びるのを待った。 丸見えだ。 ラブホテルってこんなんなんだ。 そりゃそうだよな、そういうことをするところだもんな。 そんなことを考えていた。 最初僕は勃たなかった 悪いことをしているという良心への呵責か。 そのまま何事もなく朝を迎え別れていればよかったのだろうか 夜中目が覚めた。 栞も寝ていなかった 僕たちは再び抱き合った 求めあった 栞は泣いていた ホテルを出た後、近くのカフェで朝食をとり 僕たちはあっさり別れた いや、僕があっさりその場を立ち去った 栞はあのとき泣いていたのだろうか 僕は復讐を果たしたと思ったのだろうか この夜のことが、栞を深く傷つけたなんて思いもしなかった 僕の中の良心や誠実さや正義感やモラルが 崩壊しつつあった
本大好きサラリーマンの小説㉕~うまくいかない~
大学4年2月 とりあえず、就職しないとな 就職情報雑誌ビーイングを広げ、能力開発を謡う会社に電話して 面接を受けた。 即採用された。 卒業を待たずにすぐに働き始めた。 新宿高層ビル47階にオフィスがある 営業だ いわゆる電話営業 見ず知らずの人に電話して、営業トークをする 罵声も浴びせられる 人付き合いが苦手な僕が、何故この仕事を選んだ? 高い教材を売る仕事だ 「自分が買わないような商品を人に薦めて買ってもらう」 こりゃ無理だ。。。 2週間で辞めた 今思えば、仕事ってそういうもので 当然、ずっと続けていれば違う人生になっていただろう 仕事っていうのはストレスがかかるんだ そのストレスの対価が給料なんだ また宙ぶらりんになった 卒業 とりあえず実家には帰りたくない バイトで貯めたお金引っ越し 八王子を離れた
本大好きサラリーマンの小説㉔
大学4年 同級生を好きになった 1年の頃から知っている子で、ゼミも同じだったり 共通の友人がいたりして、一緒に遊ぶ機会が増えた 栞と別れてから、3人で遊ぶことが増えた 聡志と敦子と美紀 3人で箱根に旅行にも行った。 美紀は僕の気持ちを知っていたので、よく相談に乗ってくれた 顔がタイプだった 一言で言えば「かわいい」 守って上げたくなるタイプ 栞は、、、なんというか、 危なっかしかった 放っておけなかった とは言っても敦子は彼氏持ちだったから、アクションを起こすことはなかった 卒業間際、告白をしたが振られた そしてまた、思考は栞を欲しがった 心の中の栞に語りかける 「振られたわ。。。」 2月 卒業間近 就職も決まらず宙ぶらりんなまま日々が過ぎていった
本大好きサラリーマンの小説㉓~隣人~
あっ、あんっ、 隣の部屋から毎日のように聞こえてくる 木造なんだよ 家賃安いんだよ 壁薄いんだよ それでも、壁に耳をつけて聞いている僕。 股間に手が伸びる 屹立した性器を手でしごく 果てた後、虚しい気持ちになる 「何やってんだろう、俺は。。。」 男と女は結局セックスだ セックスなしでは生きていけない
本大好きサラリーマンの小説22~引っ越し~
栞と別れてしばらくした頃、 ある事件がきっかけで西八王子のマンションを引っ越すことになった。 ラーメン屋のアルバイトが終わって0時過ぎにマンションに帰ってきたら 部屋のドアのポスト入れがうんこで埋め尽くされていた これはなんだ? いたずらか? びっくりすると同時に怖くもなり すぐに引っ越しを決めた もう偶然、栞に会うこともないだろう。 家トラブル その後の人生でも起こった。。。 隣駅の八王子に引っ越した 木造2階建て ここでも隣人トラブルが発生することになる
本大好きサラリーマンの小説㉑~大学4年生~
大学生活も残り1年 就活で慌ただしくなる同級生。 金髪にしていた奴も黒髪に戻し始めた頃 僕は金髪坊主にした。 そういうところが、僕にはあった。 世の中の流れに反発するような 敢えてレールから外れるような だから、就活もしなかった コンビニのバイトは辞めて、ラーメン屋のバイトを始めた。 取り憑かれたようにバイトに明け暮れた。 ラーメン屋のバイトは楽しかった。 雇われ店長の加藤さん ギターを愛する松森さん バイト想いの市木さん ちょっとセクシーな由香さん その由香さんと不倫をしている太利さん ヤンキー姉さん美樹さん 同じ学生のチャーリー アル中の緒方さん 個性の強い人たちばかりで、気は紛れた 一度、美樹さんに酔った勢いで犯されそうになった。 由香さんは店のお金を取って逃げた 加藤さんとはいろいろ話した。 奥さんとは離婚して、男手一つで女の子三人を育てている。 松森さんはラーメン作りながら大声で歌っている 緒方さんは、いつもポケットに酒を忍ばせていた。 チャーリーは宗教の勧誘をしつこくしてきた まともな人は一人もいなかった。 それが良かったのかもしれない。 栞がいない日常に慣れてきた。 淋しさは自慰行為で紛らわした。 就職活動もせず、卒業後の進路も決まらないまま、22歳の誕生日を迎えた。
本大好きサラリーマンの小説⑳
別れた後、八王子駅の改札を出たところで、栞を見かけた。 目が合った と思ったのは僕だけだろうか。 栞、今も俺は不器用なままだ。あの頃と何も変わっていない。 伝えるのが下手なんだって。 変わってないよね? 歳だけとってしまった 別れてから付き合った人たちに、栞を重ねた ある人は「重い」と言った それ以来、栞のことを話したことはない 20歳秋、それから僕の感情は止まったまま。。。