本大好きサラリーマンの詩

僕らはみんな詩人だったはず

好きなように空想して

想像の世界を楽しんでいたはず

歳をとって

現実を見るようになって

想像を楽しむことをやめてしまった

悩みや不安が心を研ぎ澄ませる

悩みや不安がない世の中なんてまっぴらごめんだ

悩みや不安があるから

人は成長していける

悩みや不安があるから人間でいられる

子供には子供の

大人には大人の

人それぞれの悩みや不安がある

そこから逃げないように

立ち向かえるように

本大好きサラリーマンの詩

背中をポンポンと叩かれる

これは好意の現れではないだろうか

妻からポンポン

子供たちからポンポン

ポンポンは心地いい

ポンポンされて嫌悪感感じる人はSかもね

おっと

コンプライアンスに引っかかる

発言にも気をつけねば

ポンポンしてみたらいい

背中をポンポン

肩をポンポン

気になるあの人の肩もポンポン

きっとそこから始まるさ

本大好きサラリーマンの小説㉟

「恥の多い生涯を送って来ました」

太宰治「人間失格」の冒頭

自分の生涯も恥が多い

栞と付き合っていた時

恥も多かったけど真っすぐだった

あの頃の自分が懐かしい

あの頃の自分に戻りたいと、時々思う

今の自分は汚れてしまった

30代はあっという間だった

仕事では何も成し遂げられず

妻には尻にしかれ

毎日気持ちを奮い立たせなければ立っていられないような眩暈を覚える

西八王子のあの川沿い

散歩した公園

「定丸」で過ごした一夜

友人のマンションで抱き合った夜

駅のホームで交わした口づけ

すべての思い出が色褪せない

この先も恥をさらしながら生きていくのだろう

この先、二人の糸が再び交わる時は来るのだろうか

そんなことを考えるのも悪くない

衰えた脳でそんなことを考える

本大好きサラリーマンの休息

ちょっと休息

最近、小説を読むようになった。

以前はビジネス書ばかりだったが、自分は何を書きたいんだろう

と考えたら、小説だな。

だとしたら、ビジネス書ではなくて小説を読むべきだ。

恋愛、仕事、青春、ミステリー、ホラー、非現実。。。

人間関係。

言葉にはならない、決して外には出てこない

そういう人間の内面を感じる

ふとした表情や、態度、そこからネガティブやポジティブを感じる

何がよくて何が駄目だったのか。

ポジティブな小説を読めばポジティブな気持ちになる

ネガティブな小説を読めばネガティブな気持ちになる

ポジティブな時はポジティブなものを読みたくなるし

ネガティブなときはネガティブなものを読みたくなる

空想の世界で僕はどんな風に生きているだろう

どんな風に生きたいのだろう

人と関わりたくないと思いつつ

人と関わらなければ何も生まれない

25年前、確かに僕はそこにいた。

痛いくらい真っすぐだった

25年後の今

人に誇れるような人生を歩んできただろうか

自分の歩んできた道に満足しているだろうか

心が答えを求める

まだ

走る続ける

本大好きサラリーマンの小説㉞

「店長は将来何をしたいんですか?」

「俺、本を書きたいんだ」

「店長なら書けますよ」

有沙の無邪気な笑顔

遠慮のない言葉が僕を勇気づけてくれた

この恋はいつ終わるのだろう

幸せであればあるほど

絶頂であればあるほど

その反対にある別れを僕は恐れた

一瞬一秒を心に焼き付けるように

どんな場面も思い出せるように

心に刻んだ



相手の気持ちが冷めていくのがわかることほど辛いものはない

でも、僕は感じた

いつからか、メールの返信が遅くなったり

そっけない内容が続くようになり

終わりを悟った

栞のときのように

僕は悟った


恋はいずれ終わる

そのまま枯れるのか

愛に育つのか

血の繋がりのない愛はあるのだろうか

僕の魂は、今を生きているだろうか



本大好きサラリーマンの小説㉝~恋~

バレンタイン当日

事務所の金庫を開けるとメッセージ付きのチョコが入っていた

有沙だった

どういうことだろう?

普通に渡してくれたら、何も思わなかったかもしれない

サプライズが恋心に変わった

それから頻繁にメールをするようになった

他愛もない内容だったけど

毎日が楽しかった

有沙専用の着メロ

その音が鳴る度、僕の心は踊った

二人だけの秘密

有沙は一人で僕のマンションにくるようになった

「彼氏は裏切れないから」

そういって有沙は手でしてくれた

遠距離の彼氏とは別れない

でも僕とは一緒にいる

有沙はよく笑いよく喋った

長崎の独特のイントネーションがより一層有沙をかわいく思わせた

僕たちが身体の関係を結ぶのに時間はかからなかった

有沙の身体は瑞々しかった

きれいなものを汚しているようで罪悪感と背徳感を感じた

僕はどうしようもなく有沙に恋をしていた。

恋はいつか終わるものだと知っていながら

いつか目が覚めると知っていながら

少しでも続けばいいと思っていた

本大好きサラリーマンの小説㉜~幻想~

誰かを好きになる度に

栞のことを思い出す

栞に語りかける

智美に話して以来

栞のことを人に話したことはない

自分の恋愛を人にはなすとき

自分の過去を話すとき

栞のことは話さない

でも、多分あそこにいたのが本当の自分で

それを知っているのは栞だけ

幻想なのだろうか

今会ったら幻滅するのだろうか

過去をさまよいながら生きている

栞のことを思い出す時

僕は独りになる

独りを感じる時

栞を思い出す

一人じゃないって思える

矛盾してる

独りを感じる時

栞に話しかける

僕は今どこを歩いているのだろうか

僕は正しい方向へ向かっているのだろうか

僕は今、自分に正直に生きているのだろうか

栞

今でもたまに夢に出てくる

目が覚めた時

このまま目が覚めなければいいのにって思う

夢の中ではいつも笑っている


本大好きサラリーマンの小説㉛~虜~

誕生日以来、有沙のことが気になった

有沙のそれは、多分、「好き」という感情ではなかった

有沙の目に僕はどう映っていたのだろう

東京から来た独身男性

独りぼっちで可哀そう

そういった同情の感じが強かったのではないか

有沙には彼氏もいた

僕はそれを知っていた

手を出すほど勇気も度胸もない

僕28歳、有沙20歳

歳も離れている

店長とアルバイト

有沙は人懐っこかった

有沙は時々、核心をつく

「店長は冷たい」

そんな言葉も新鮮だった

そう思っても、それを直接言ってくれる人は中々いない

部下であれば尚更

僕のそんな「冷たい心」を温めようとしてくれたんじゃないか

人は本来優しい生き物のはずだ

僕には優しさがかけていた

人の感情を逆なでにするようなことを平気で言った

有沙はそんな僕を案じてくれていたのだ

有沙の虜になるのにそう時間はかからなかった

本大好きサラリーマンの小説㉚~再び灯る~

一人の時間を楽しんだ
寂しい夜は
バー「サントス」で過ごした

仕事のストレスはほとんど感じなかった
職場の環境は良かった

天性なのだろうか
人には恵まれた

美穂が転勤で長崎を離れる時も笑って別れた

人付き合いが下手な僕を
長崎の人たちは受け入れてくれた

時に言葉で傷つけたこともあった
行動で傷つけたこともあった
でも仕事では手を抜かなかった
だからついてきてくれたのだと思う

長崎で迎えた最初の誕生日
夜中0時を過ぎた頃、インターホンが鳴る

「どうしたの?こんな夜中に?」
怪訝な顔で尋ねる僕に

「お誕生日おめでとう!」
サプライズ

なんで俺の誕生日知ってるの?

「さてなんででしょう?」

あー、そうか。この前の契約書のサンプル
見本で書いたやつか。。。

それを見て、夜中の0時過ぎるのを待って来てくれたのか

誰が企画したかは分かってた

有沙

いつも僕の気を引こうと、話しかけてくれた子

僕の心に再び灯がともった


本大好きサラリーマンの小説㉙~最低な男~

長崎で多くの仲間に出会った
一人で行けるバーも開拓した
一度、そのバーに部下を連れて行ったことがある。
マスターやママから「美穂ちゃん」と呼ばれているその子もまた
長崎に来て日が浅かった。

夜遅くまで二人で飲んで
帰る時、ママから「美穂ちゃんをちゃんと家まで送ってくんよ」
と言われ送っていった。
あれは、マスターとママと美穂の共謀だったのだろうか。

マンションの下まで送ると
「聡志さん、うち上がっていきます?」
据え膳食わぬは男の恥
酔った勢いもあり、美穂の部屋に入った

カーペットに腰を下ろした時
美穂のスカートから下着が覗いた

僕の理性は飛んでしまった
美穂のことは好きでもなかったし
ましてや部下
しかも知り合って間もない

駄目だと頭では理解しつつ
美穂の口に含まれた僕の性器は抑えが効かなくなっていた
下着をずらし
騎乗位で下から突き上げる
必死に腰を振る


終わった後、後悔の念が押し寄せてくる
美穂は恐らく僕のことが好きだったのだろう
「泊っていきますよね?」
(帰りたいんだけど)
「うん」

朝が来て美穂の部屋を一緒に出て別れた後、
どうやってなかったことにするか、考えた。

その日の夕方に会った時
美穂にははっきり告げた
「ゴメン。昨日のことはなかったことにしてくれ」

最低な男がそこにいた。

それからしばらく何事もなかったかのように一緒に働いた
美穂は僕のことをどんな風に思っていたのだろう
あんな一方的な言葉に納得できたのだろうか



「私、擦れた男が好きなんです。」

美穂はそう言って笑った。