誕生日以来、有沙のことが気になった 有沙のそれは、多分、「好き」という感情ではなかった 有沙の目に僕はどう映っていたのだろう 東京から来た独身男性 独りぼっちで可哀そう そういった同情の感じが強かったのではないか 有沙には彼氏もいた 僕はそれを知っていた 手を出すほど勇気も度胸もない 僕28歳、有沙20歳 歳も離れている 店長とアルバイト 有沙は人懐っこかった 有沙は時々、核心をつく 「店長は冷たい」 そんな言葉も新鮮だった そう思っても、それを直接言ってくれる人は中々いない 部下であれば尚更 僕のそんな「冷たい心」を温めようとしてくれたんじゃないか 人は本来優しい生き物のはずだ 僕には優しさがかけていた 人の感情を逆なでにするようなことを平気で言った 有沙はそんな僕を案じてくれていたのだ 有沙の虜になるのにそう時間はかからなかった